生姜と緑茶はそれぞれ別の側面で認知症を遠ざけます

【要旨】現在の認知症患者数はおよそ600万人ですが、2025年には700万人を超えると予測されています。認知症の約3分2はアルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症の人の脳では、神経伝達物質のアセチルコリンの活性が低いことから、アルツハイマー型認知症の症状は脳内のアセチルコリン活性が低くなってしまったために起きているのではないかとの仮説から、コリンエステラーゼ阻害薬が開発されました。生姜はコリンエステラーゼ阻害作用を有し、しかも緑茶のエピガロカテキンガレートはネプリライシンという酵素によって脳の老廃物のアミロイドベータペプチド(Aβ)を分解する働きがあり、生姜と緑茶はそれぞれ別の側面から、記憶力の低下防止、アルツハイマー型認知症の発症予防ならびに進行抑制、脳卒中のリスク低下による血管性認知症の予防などに効果を発揮する可能性があります。「生姜緑茶」習慣は認知症の予防の観点からも、できるだけ早い年齢期から初めることをおすすめします。

認知症の患者数は、2017年末の時点でおよそ600万人であり、およそ68%がアルツハイマー型認知症、20%が血管性認知症です。

アルツハイマー型認知症の人の脳内ではアセチルコリンエステラーゼ(AChE;神経伝達物質のアセチルコリン(ACh)を分解する酵素)活性が亢進してしまい、アセチルコリン(ACh)が減少してしまっています。そこで、AChEを阻害することによってAChを増加させるアルツハイマー治療薬の一つがリバスチグミン(Rivastigmine)で、AChE阻害作用があります。

生姜について、エジプトのエジプト国立研究所でのラットを用いた実験で、AgCl3によって作製したアルツハイマー型認知症モデルに、生姜の水抽出物を経口投与すると、リバスチグミンと同様に、ロータロット試験やT迷路試験の成績が改善し、AChE活性が低下し、AChが増加しました。よって、生姜はアルツハイマー治療薬と同様に、アルツハイマー型認知症などの神経変性を抑えることがわかりました。

イランのブ・アリ・シーナ大学でのラットを用いた研究では、モルヒネによって記憶障害を引き起こしたラットが生姜抽出物をとると、ステップスルー型受動回避試験での成績が改善することを明らかにしています。生姜のジンゲロールやショウガオールの抗酸化作用や炎症作用によって転写因子NF-κBを制御し、iNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素)、COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)および炎症性サイトカインの発現を抑制することによって記憶障害が解消されると考えられます。

一方、緑茶も記憶力を高めたり、認知症を遠ざけてくれたりします。

スイスのバーゼル大学では、健康な人を対象に緑茶抽出物を含むドリンクを飲んだ場合と含まないドリンクを飲んだ場合で、ワーキングメモリ(情報の一時記憶)作業中の脳活動を機能的MRI(fMRI)画像で観察しました。その結果、緑茶抽出物を含んだドリンクを飲んだ群では、頭頂部から前頭葉にかけてのシナプス接続が活発になり、ワーキングメモリ課題の成績も向上しました。このことから、緑茶を飲む習慣は老若男女にかかわらず、記憶力を向上させ、頭をよくする可能性があります。

金沢大学による特定集団調査によると、60歳以上で緑茶を毎日飲む人は、まったく飲まない人に比べ、認知症や軽度認知障害(MCI)になるリスクが0.32倍と、何と約3分の1でした。なお、コーヒーや紅茶では認知症やMCIのリスクは下がりませんでした。

東北大学による特定集団調査では、65歳以上で毎日5杯以上飲む人は、1杯未満(ほとんど飲まない)人に比べ、重度な認知障害(incident dementia)になるリスクが0.73倍でした。なお、ウーロン茶や紅茶ではリスクが下がりませんでした。

ブラジルのパンパ連邦大学では、ラットによるアルツハイマー病モデルを用いて、緑茶(green tea)、ルイボス茶(red tea)、紅茶(black tea)での神経保護効果を調べたところ、緑茶が最も強い神経保護効果を持つことがわかりました。ルイボス茶や紅茶にはエピガロカテキンガレート(EGCG)が含まれていないためだと考えられています。

米国のミズーリ大学でのマウスを用いた実験で、エピガロカテキンガレート(EGCG)の摂取や適度な運動は、脳の健康によく、大脳皮質や海馬でのアミロイドβペプチド(Aβ)のレベルを下げて、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせるようだ、と述べています。

中国の広州中医薬大学では、マウスによるアルツハイマー病モデルを用いて、エピガロカテキンガレート(EGCG)が、ネプリライシン(Neprilysin)という酵素の活性を高め、アルツハイマーによる認知機能の退化を抑えることを明らかにしています。ネプリライシンはアルツハイマー病の原因の一つと考えられるアミロイドβぺプチド(Aβ)を分解する酵素のことです。

中国の山東工業大学(現.山東大学)の8つの論文の統合評価で、お茶を飲む習慣のある人は、ない人に比べ、パーキンソン病のリスクが0.85倍でした。この効果はおそらくエピガロカテキンガレート(EGCG)の抗酸化、抗炎症、鉄のキレート化によるものと推測されています。

このように、「生姜緑茶」は記憶力の低下防止、アルツハイマー型認知症の発症予防ならびに進行抑制、脳卒中のリスク低下による血管性認知症の予防、それにパーキンソン病の予防にも効果的と考えられます。

のように、アルツハイマー病の発症の25年くらい前から脳の老廃物のアミロイドβペプチド(Aβ)が最初に脳神経細胞の外側にできてきますので、「生姜緑茶」習慣はできるだけ早い年齢から開始しておいたほうが効果的と思われます。