ココアはメタボ体質だけでなく記憶力をも改善する

【要旨】ミクルココアではなく純ココアを一日3杯程度とる習慣は、高めの血圧を下げるだけでなく、高めの血糖値を下げたり、脂質異常を改善したりする働きに加え、認知機能の低下を防ぐ働きもあります。純ココア一杯で約200mgのココアポリフェノールがとれ、その中にフラバノールが140mg程度含まれるので、一日3杯程度、2ヵ月間以上飲み続けると、これらの効果が期待できる。

 ココアの主な健康成分はポリフェノールの一種であるフラバノール(Flavanol)ですが、このフラバノールは高血圧、高血糖、脂質異常といったメタボ関連症状のほかに、認知機能の改善にも役立つことが分りました。

 それはイタリア中部(ローマの北東約100km)にあるラクイラ大学での比較研究(2015)で、認知機能に異常がない老人90名を、フラバノールを多量(993mg/日)に摂取するHF群、中量(520mg/日)摂取するMF群、少量(48mg/日)摂取するLF群に無作為に割り付け、試験開始前と8週間摂取後でのメタボ関連指標や認知機能指標の変化を調べたものです。

 その結果、試験開始前と8週間摂取後との比較で、収縮期/拡張期血圧(家庭血圧の基準値125/85未満)[mmHg]はHF群で138.0/83.5→130.2/78.8(前後差-7.8/-4.7)、MF群で137.0/83.5→130.2/80.3(-6.8/-3.2)と有意に低下したが、LF群では136.1/82.4→134.5/80.8(-1.6/-1.6)で拡張期血圧は有意な低下を示さなかった。

 空腹時血糖(基準値60~109)[mg/dl]はHF群で96.8→80.8(-6.0)、MF群で93.7→84.9(-8.8)と有意に低下したが、LF群では100.8→99.8(-1.0)で有意な低下ではなかった。

 血中インスリン濃度(基準値1.84~12.2)[μU/ml]はHF群で9.59→6.33(-3.26)、MF群で10.14→5.73(-4.41)と有意に下がったが、LF群では9.91→10.18(0.27)と有意に上がった。

 HOMA-IR(インスリン抵抗性指標、基準値1.6以下)はHF群で2.37→1.41(-0.96)、MF群で2.36→1.21(-1.15)と有意に下がったが、LF群では2.65→2.64(-0.01)で有意な差はなかった。

 血中脂質について、悪玉のLDLコレステロール(基準値70~119)[mg/dl]はHF群で121.8→103.2(-18.6)、MF群で128.8→112.9(-15.9)と有意に下がったが、LF群では127.6→126.1(-1.5)で有意な差はなかった。

 善玉のHDLコレステロール(基準値40以上)[mg/dl]はHF群で51.8→53.4(1.6)、MF群で48.0→49.1(1.1)と有意に高まったが、LF群では46.8→47.2(0.4)で有意な差はなかった。

 中性脂肪(基準値50~149)[mg/dl]はHF群で128.5→124.9(-3.6)、MF群で136.4→127.6(-8.8)と有意に下がったが、LF群では142.6→140.0(-2.6)で有意な差はなかった。

 一方、生活習慣病や老化の原因となる酸化ストレス(活性酸素による細胞ダメージ)のマーカーである8-Iso-PGF値[pg/ml]はHF群で296.8→228.7(-68.1)、MF群で307.6→267.1(-40.5)と有意に下がったが、LF群では303.6→327.5(23.9)で有意な差はなかった。

 認知機能に関して、脳卒中の後遺症などによる高次脳機能障害のうち、特に注意障害(視覚による追跡能力)などを評価するTMT(Trail Making Test)のA検査とB検査において、TMT-A/TMT-B[秒]はHF群で33.87/79.23→25.25/62.71、MF群で32.27/78.27→25.58/63.99と有意な好成績を示したが、LF群では33.07/77.45→32.13/76.43で有意な差を示さなかった。

 言語・認知機能の低下や障害を発見するVFT(Verbal Fluency Test;言語流暢性課題)[語/60秒]においてはHF群で24.87→32.58、MF群で26.13→29.62、LF群で23.72→25.05といずれも有意な好成績を示した。

 以上のことから、ココアフラバノールの多量ないし中量摂取は高血圧、高血糖やインスリン抵抗性および脂質異常の改善に役立つとともに、認知機能の低下も防ぐことが分りました。

 特に糖尿病と認知症との間には深い関係があり、福岡県糟屋郡久山町での疫学研究において、糖尿病の人はそうでない人に比べてアルツハイマー病の発症率が2.18倍、脳血管性認知症の発症率が2.77倍起こりやすいことが分っています。

 つまり、ココアフラバノールを一日3杯程度とる習慣は、高血圧のみならず、高血糖やインスリン抵抗性といった糖尿病関連ならびにコレステロールや中性脂肪といった脂質異常関連の指標を改善するとともに、認知機能の低下をも防ぐことが明らかになりました。

 そういえば、ニューヨークにあるコロンビア大学での研究(2014)でも、フラバノール高含有(900mg/日)のココアを3カ月間飲み続けると、海馬の歯状回の血流が増加し、50~60代の人の記憶力が30~40代の水準に改善することを報告しています。

 推測の域を出ませんが、受験生がフラバノール高含有のココアを受験勉強期間中に飲み続ければ、海馬や前頭前野などへ血流が増加し、記憶力や理解・判断力が向上する可能性があります。