【第44節】認知症は地中海式の食事としょうが(ウコン)や赤ワイン(赤ぶどう果汁)で防げます!

  「ショウガが認知症(Dementia)の予防や進行抑制によい」という前節のお話と関連して、ウコン(鬱金)がよいのでは?とか、その他でよいものは?といった質問がありました。
  ショウガの英語名はジンジャー(ginger)で、その主成分がジンゲロールやショウガオールですが、ウコンの英語名はターメリック (turmeric)で、その主成分がクルクミン(crucumin)です。
  確かに、クルクミンは生のショウガに多く含まれる6-ジンゲロール(6-gingerol)と生物学的活性が似ており、6-gingerolと同様、認知症の予防に役立ちます(Shishodia S., et al. Ann. N.Y. Acad. Sci. 1005; 1056: 206-17)。
  最近、ショウガやウコンのほかに、認知症の予防や進行抑制に役立つとして注目されているのが赤ワインや赤ぶどう果汁やブルーベリー果汁です。
  赤ワインやこれらの果汁には、血管をしなやかに保ち、心血管病の予防や長寿に役立つといわれているプロシアニジン(procyanidins)やレスベラトロール(resveratrol)という抗酸化力の強いポリフェノールが多く含まれています。
  赤ワインのうちでも、プロシアニジン(プロアントシアニジン・ピクノジェノール・フラバンジェノールともいう)が数倍高いのは、フランス南西部(ジェール地方)とイタリア・サルデーニャ島(ヌオロ地方)のもので、品種としてはカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)だそうです(Wang J., et al. FASEB J. 2006; 20(13): 2313-20)。
  最近話題のレスベラトロールは脳内で糖や脂質の代謝を高めるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)という酵素を活性化させ、右図ように、カテキンやケルセチンと異なり、脳内でゴミとなるアミロイドβタンパク質を用量(濃度)依存的に分解して、その沈着を抑えるため、アルツハイマー型を含む認知症の予防や進行抑制に役立つことが分かってきまた(Vingtdeux V., et al. BMC neurosci. 2008; 9(Suppl 2); S6)。
  では、赤ワインをどれくらい飲めば認知症の予防や進行抑制に役立つのでしょうか?
  アルツハイマー病の国際学会(2009年7月)でのSink氏ら(ノースカロライナ州にあるWake Forest大学医学部)の発表によれば、1日1~2杯の赤ワインを常飲している人は認知症のリスクが37%減少し、逆に多量飲酒者(heavy drinker)は認知症のリスクが2倍になってしまうそうです。
  スウェーデンのヨテボリ大学のMehlig氏らの34年間のコホート(追跡)研究(Am J Epidemiol 2008;167(6):684-91)では、ワインを時々飲む人は認知症のリスクが40%低く、ワインだけを飲む習慣の人は70%もリスクが低くなりました。
  逆に、ウィスキー・ブランデーといった強い蒸留酒(strong spirit)を飲む習慣のある人はリスクが50%増加しました。
  オハイオ州にあるシンシナチ・アカデミック・ヘルスセンター大学のKrikorian氏らのランダム化比較試験(Br J Nutr 2010;103(5):720-4)では、コンコード種のぶどう果汁を12週間飲み続けると、言語学習能力や空間想起能力などが改善されることを明らかにしています。
  果物や野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類、オリーブ油やn-3系不飽和脂肪酸(右図)ならびに魚介類を多く食べる地中海式の食事で、お酒(特に赤ワイン)や赤ぶどう果汁ないブルーベリー果汁を少々たしなみ、乳製品や赤身肉をあまり摂りすぎない食習慣が認知症の予防や進行抑制につながることが分かりました。
  ニューヨークにあるコロンビア大学医療センターのScarmeas氏らのコホート研究(JAMA 2009; 302(6): 627-37)によれば、地中海式の食事の遵守度が高くて運動量も多い人は、そうでない人に比べ、アルツハイマー型認知症のリスクが約65%低いそうです。
  一方、バージニア州のバージニア大学医学部のDeKosky氏らのランダム化比較試験(JAMA 2008;200(19):2253-62)では、正常または軽度認知障害の高齢者3069人(72~96歳)を対象に、一日あたり240mg(120mg×2回)のイチョウ(ginko biloba)エキス摂取群とプラシーボ(偽薬)摂取群に分けて、平均6.1年間の追跡調査を行った結果、イチョウエキスを摂取しても、しなくても数種類の認知機能評価検査に有意差はなく、イチョウエキスによる認知症の予防効果や進行抑制効果はあまり期待できません。
  やはり、認知症の予防や進行抑制には、地中海式の食事のほか、ショウガ(ウコン)、赤ワイン(赤ぶどう果汁・ブルーベリー果汁)を摂ったり、運動したりする習慣をつけ、脳内の血行促進(血流改善)に加えて、活性酸素を除去し脳神経線維の慢性炎症を防いだり、アミロイドβタンパク質を分解したりすることが重要です。
  その他に、抗酸化ビタミンのビタミンE・C・β-カロテンとか、血管内皮細胞に障害を与えるホモシステインの産生を抑える葉酸・ビタミンB6・B12とか、さらにはセレン(selenium)やアセチル-L-カルニチン(acetyl-L-carnitine)の不足が認知機能の低下に関わっているといった報告もありますが、これらについてはさらなる検証が必要です。