【第23節】”しょうが(生姜)”による「がん」の増殖・転移の抑制メカニズム

  がん(cancer)といえば、最近、男性では肺がん、大腸がん、前立腺がんにかかる人が増える傾向にあり、女性では大腸がん、乳がん、肺がん、膵がんが増える傾向にあります。
  そして、がんで亡くなる人は全死因の約30%(約33万人/年)で、心疾患では約16%、脳血管疾患では約12%となっています。
  多段階発がん説によると、がん細胞から歴としたがんになるには、①発がん物質・放射線・ウイルス・活性酸素などのがん発生要因によって、DNA中のがん関連遺伝子(がん遺伝子やがん抑制遺伝子)が傷害され、その修復が間に合わないこと(イニシエーション過程)、②発がん物質・活性酸素・2次胆汁酸・動物性脂肪・リノール酸・食塩・ホルモンなどのがん促進要因によって、がん細胞の分裂・増殖を早めてしまう過程(プロモーション過程)、③がん細胞集団の中で最も質の悪い集団が大勢を占めてしまう過程(プログレッション過程)の3つの過程を経ると考えられています。
  これらの過程において、慢性化した炎症細胞やがん細胞の内部で、活性化したマクロファージや好中球がTNF-α(tumor necrosis factor-α)やインターロイキン(IL-1, IL-6, IL-8)といった炎症性サイトカインならびにフリーラジカルによって、NF-κB(nuclear transcription factor-κB)という核転写因子を活性化させてしまうと、COX-2(cyclooxygenase-2)という酵素が合成され、プロスタグランジン(prostagrandin-E2など)が大量に作られるようになります。
  プロスタグランジンが大量に作られると、痛みの発現とともに、炎症が悪化し、がん細胞の増殖を促進させたり、がん細胞に攻撃をかける免疫機能の働きを抑えたり、がん組織に栄養を供給するための血管新生が促されるため、がん細胞のアポトーシス(自滅)がうまく行かず、がんの増殖・転移がますます活発になります。
  ところが、”しょうが”の主な刺激(辛味)成分であるジンゲロールやパラドールなどは、がん関連遺伝子の突然変異を抑制したり(イニシエーション阻害)するほか、慢性的な炎症を抑えて、NF-κBやMAPキナーゼ(細胞内増殖シグナル伝達分子)の活性化を阻害することで、COX-2の合成を阻止し、プロスタグランジンを大量に作らせないようにして、がんの増殖・転移を食い止める(プロモーション阻害)ことが、動物を用いた多くの発がん実験やがん移植実験で明らかになっています。
  インド北部のウッタルプラデシュにある産業中毒研究センターのShukla氏らの解説(Food Chem Toxicol 2007;45:683-90)などによると、”しょうが”は胃がん・大腸がん・乳がん・前立腺がん・皮膚がんの増殖・転移を防ぐという、動物実験での報告がなされています。
  ”しょうが”によるがん予防効果についての疫学調査や臨床試験は今のところ見当たりませんが、”しょうが”を時々、食べる習慣はがんの予防には効果があると考えられます。
  たとえば、大腸がんの予防には、”しょうが(生姜)”のほか、ニンニクや、カリフラワー・ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜も有効です。
  また、私の専門のビタミンDも2次胆汁酸(リトコール酸)をCaで中和して腸内の炎症を防ぐので、大腸がんのリスクを最大で半減させます。