【第16節】”しょうが(生姜)”は風邪やインフルエンザに効果があるのでしょうか?

  ”生しょうが”を温めると増えるショウガオール(shogaol)は消化器官を中心とした体幹部を温め、消化不良や冷え症の改善ならびに免疫力のアップなどに役立ちます。
  昔から風邪(普通感冒)やインフルエンザの引き始めに”しょうが湯”を飲むとよいといわれているのは、そのウイルスが集まりやすい上気道部の体温を高めることによって、免疫力をアップさせるとともにウイルスの活動性を弱めるためだと思います。
  ”しょうが(生姜)”には細菌やウイルスのほか、真菌(カンジダ、水虫など)や寄生虫(回虫、アニサキスなど)をも駆除する働きがありますが、ここでは抗菌効果と抗ウイルス効果のエビデンスをご紹介します。
  まずはヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)ですが、インド(カルナカタ州)の中央食品技術研究所のSiddaraju氏らによるラットを用いた実験(eCAM 2009;On-line)によると、”しょうが”の水抽出物(ジンゲロールやショウガオールなど)は、胃酸分泌反応の最終段階で働く酵素(H+,K+-ATPase)の活性を抑えて胃酸の過剰分泌を抑制し、さらにピロリ菌の増殖を抑えて胃潰瘍になりにくくする、いわゆる健胃作用があります。
  また、”生しょうが”に多いジンゲロールは歯周病の原因菌(Porphyromonas gingivalisなど)に対して抗菌作用を発揮するというデータもありますし、”生しょうが”はリステリア菌やブドウ球菌あるいは腸球菌(糞便レンサ球菌)といった細菌類に対してその増殖を抑えるため、”生しょうが”を刺身などの薬味に使えば、生臭さを消すだけでなく、その殺菌作用によって歯周病や食中毒の予防にもなります。
  お寿司にガリを添えるのも、昔からの経験的な知恵として、”しょうが”の殺菌効果が知られていたからだと思います。
  では、”しょうが(生姜)”を食べると風邪(普通感冒)やインフルエンザを予防する抗ウイルス効果もあるのでしょうか。
  富山医科薬科大学(富山大学医学部)の落合弘氏らの細胞培養実験(Am J Chin Med 2006;34(1):157-69)によれば、”生のしょうが抽出物”よりも”煮詰めたしょうが抽出物”に抗インフルエンザウイルス効果が期待できるようです。
  ”煮詰めたしょうが抽出物”は、異物として認識されるためか、免疫細胞のマクロファージを刺激し、その活性を高めることによって、ウイルスに対する免疫力(臨戦態勢)を迅速に高め、間接的にインフルエンザウイルスの増殖を抑えます。
  また、動物実験ですが、インフルエンザに感染させたマウスに水だけ与えたコントロール群では感染9日後の生存率が77%になったのに対し、”煮詰めたしょうが抽出物”(4mg/日)を与えた”しょうが群”では93%でした。
  さらに、”煮詰めたしょうが抽出物”を与えた”しょうが群”は呼吸器官から採取したウイルス量が水だけ与えた”コントロール群”の約5分の1でした。
  これらの実験より、”煮詰めたしょうが抽出物”には生体の感染防御機能を向上させ、インフルエンザウイルスの増殖を抑える効果があると考えられます。
  その後の落合弘氏らの細胞培養実験(Am J Chin Med 2008;36(6):1171-83)で、マイタケ(Grifola frondosa)にも抗インフルエンザウイルス効果を認めています。
  まだ細胞培養や動物実験での結果ですので可能性に過ぎませんが、冬場の風邪やインフルエンザに備えて、秋から時々、”しょうが(生姜)”や”まいたけ(舞茸)”を加えたアツアツの鍋料理を食べて、免疫機能を高めておくとよいでしょう。