【第2節】健康食材としてのショウガのすすめ

  ショウガには、一年中出回っている「ひねショウガ」のほか、甘酢に漬けて食べる「新(軟化)しょうが」、焼き魚などに付ける「葉しょうが」などがありますが、薬効は「ひねショウガ」に多くあります。
  そのため、漢方薬(日本薬局方)では「ひねショウガ」の生を乾燥させた生姜<ショウキョウ>と、熱湯に浸してから乾燥させた乾姜<カンキョウ>が利用されています。
  一方、生のショウガ(鮮姜)は漢方薬というよりも、一般健康食材として、薬味あるいは魚・肉の臭み消しや殺菌などによく用いられます。
  また、生のショウガに多く含まれるタンパク質分解酵素(Protease)のジンジバイン(Gingibain)は肉を柔らかくする作用があるため、豚肉の生姜焼きなどに応用されています。
  漢方薬の生姜は健胃・解毒(消炎)・解熱・吐気止めなど、主に胃腸の保護に利用されるのに対し、乾姜は身体を温め、新陳代謝を活発にするため、冷え性や風邪などに用いられます。
  ドイツのコミッションE(薬用植物評価委員会)では、消化不良と乗物酔いに対して、ショウガの効果を承認しています。
  ヒトは鼻や口からショウガの揮発性の香油成分や不揮発性の刺激(辛み)成分を感じとることができます。
  香油成分として、ジンジベレン(Zingiberene)の含有率(35%)が最も多く、アロマセラピーでは精力増強や二日酔いの軽減などに役立つようです。
  なお、日本独自の品種「金時生姜」には、独特の香油成分であるガラノラクトンが含まれているため風味がよく、また辛み成分のジンゲロールやショウガオールなども多く含んでいます。
  また、ウコン(Turmeric)と同様に、ショウガに含まれる黄色い色素のポリフェノールのクルクミン(Curcumin)も、肝臓での解毒機能を高めるため、昔から二日酔いの予防によいといわれています。
  刺激(辛み)成分には、右図のように、生ショウガや乾燥ショウガの皮近くに多いジンゲロール(Gingerols)やパラドール(Paradol)と、これらを加熱(蒸し)処理することによって生じるショウガオール(Shogaol)やジンゲロン(Zingerone)があります。
  つまり、加熱によって、ジンゲロールやパラドールはショウガオールやジンゲロンに変換されるのです。
  生ショウガや乾燥ショウガに多く含まれるジンゲロールは免疫力を増強して、抗病原体作用を発揮します。
  また、ジンゲロールやパラドールには胃潰瘍やがん(悪性腫瘍)を抑える働きもあり、とりわけ6-ジンゲロール(6-Gingerol)には動物実験ですが、がん予防に関する研究論文が多数あります。
  一方、加熱(蒸し)処理したショウガに多く含まれるショウガオールやジンゲロンは、身体を温めたり、脂質代謝を高めたり、咳を鎮めたり、関節痛を緩和したりする効果があります。
  さらに、ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロンなどに共通して、吐気を抑える(鎮吐)作用や活性酸素を捕捉・消去する(抗酸化)作用ならびに血液をサラサラにする(抗凝血)作用などがあります。
  生のショウガを薬味として用いる場合には、香油成分が揮発してしまわないように、できるだけ摺り下ろした直後に食するのがよいと思います。
  ショウガは南方系の植物であるため、生のショウガの保存にあたっては、湿った新聞紙に包んで15℃くらいの冷暗所においておくか、よく洗って水気を取り、ポリ袋に入れて空気を抜いて密閉し、冷蔵庫(野菜室)に入れておきます。
  もっと長期に保存したい場合には、摺り下ろして薄く平らにのばし、ラップに包んで冷凍し、使う分だけ解凍するようにします。
  ショウガは通常の食品として摂取する限り安全ですが、一度に大量摂取すると、腹部の不快感・胸焼け・下痢などを起こすおそれがありますので、一日あたり生ショウガ換算で10g(右写真)を目安とします。
  ここで、風邪をひいた時や寒い日に、朝や昼には「ショウガ紅茶」、夜には覚醒・興奮作用や利尿(尿量増加)作用のない「ショウガ湯」をおすすめしたいと思います。
  美味しく効果的なショウガ紅茶をつくるには、温めた容器で紅茶に熱湯を注ぎよく蒸らし、そこに固くて表面が滑らかな「ひねショウガ」を摺り下ろしたもの、またはその絞り汁を小さじ1杯程度入れて、ゆっくり飲み始めるとジンゲロールの一部が熱でショウガオールに変化して、両方の成分を一度に摂ることができます。
  風邪気味の時は微温めにして免疫力を高めるジンゲロールを、身体を温めたい時はやや熱めにして、血行や新陳代謝を高めるショウガオールを多く摂るようにします。
  このようにすると、免疫増強作用の強いジンゲロールと代謝促進作用の強いショウガオールがほどよく混ざり合い、両方の効果が期待できるのです。
  もちろん、好みによって、葛粉小さじ半分程度を入れてとろみをつけたり、蜂蜜や黒糖を入れて甘みをつけたりしてもよいと思います。
  めまいや吐気あるいは乗物酔いを防ぐには、微温めのショウガ湯を1日3回くらい飲むようにすると、これらが起こりにくくなります。
 以上のように、最近では、ショウガの驚くべきパワーの秘密が次第に明らかにされ、専門家の間では弱った身体に非常に適した食材として注目が集まりつつあります。